one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

2017-01-01から1年間の記事一覧

寂しさを埋め込まれた

カラーコンタクト越しの瞳を至近距離で見つめる。何度も脱色と着色と黒染めを繰り返されて乾燥してる髪が寂しい。きらきらと明るい色が光る後ろには、私と同じ黒い瞳が透ける。ふうっと、いたずらに息を吹きかけられて、私の前髪がふわりと動く。薄暗い部屋…

隙間にあるもの

寂しさの隙間を、ありありと突きつけられることがある。夏休みの夕暮れに、電気をつけ忘れて本を読みふけっていたあの時。辺りの暗さに気づいて、ふと外に目をやる。そして、次の瞬間、本に目を戻した時、読めていたはずの文字は、すっかり闇に紛れてしまい…

いつかの下書き

透明なビニール傘に、叩きつけていくような雨。好きな人からのメッセージ。夜中に折り返された、お兄さんからの電話。もっと頼ってくれていいよと言われ、泣いてしまいそうな気持ちになる。反射板だけが頼りの、真っ暗な道を走ったこと。港について、あまり…

ドライブ

夜中の1時過ぎ、コンビニでアイスキャンディーを買い、携帯を見ながら好きな人を待つ。七月だというのに、全く暑くなくて、私は白いレースのノースリーブ姿だったのだけれど、少しアイスを買ったことを後悔していた。急いで食べなくても、溶けてしまわないの…

隕石が落ちてくる街を眺める話

わざと、真っ暗にしてる部屋の中。パソコンの明かりは薄らと私を照らしていた。SLAYERとMEGADETHのCDをウォークマンに入れる。午後の紅茶のシトラスティーが、ひたすらに甘くて、辟易としていた気がする。読み込み中という文字をパソコンが表示している。時…

眠る前の考え事

誰もが目をそらすようなこと、例えば道の上で動かなくなった猫とか。昨日そういえば、お兄さんと二人でいる時に見かけたのだけれど、二人して、斜め前の学習塾の看板を必死に見つめて、目をそらしたりしていた。信号待ちの間、ずっと見ていたのに、塾の名前…

DAHLIA

少し遠くの町のスタジオまで出掛けた。お兄さんは少しお酒を飲んでいた。いつか、DAHLIAを弾けるようになろうねと言われた。帰りの車の中で聴かせてもらった。とてもかっこよくて切なくて、素敵な曲だと思った。その後、お兄さんの家にギターを置き、ラーメ…

それだけのもので、

世界にミサイルを、落とそうとする国と、落とされそうになってる国があって。まぁ、両国ともニュースが賑わっています。それでも私は、朝方に眠りにつき、バイトへ行き、体調が悪い友だちの心配をしていました。小学生の頃、平和集会というのが行われていて…

ラーメンの話

スタジオ、練習終わり。一時間近く立ち話。その間に、お兄さんは、丁寧にギターを磨いて、ハードケースにしまった。スタジオ番のお兄さんとも、少し話した。いつも気さくで、本当に優しい。それからしばらく、お兄さんと二人で、これからのことを話していた…

寝言

花曇りが過ぎて、ついに雨になった。薄く水を張った道路に、花びらが浮かぶ。私は街灯を頼りに、ふらふらと歩いていた。コンビニで買うソフトクリームだけで生活していた。お兄さんが好きだと言っていたからかもしれない。それだけは喉を通った。道端に、チ…

白の靄

一目みれば、泣いてしまうような桜だった。手に持っていたパンも、隣にいる友人も、全てが一瞬で桜に奪われ、遠くに連れていかれる。ポケット中の携帯には、先輩からのメッセージが届いていた。あの景色の中で、私はどれだけのものを掴み、それ以外を取りこ…

後ろ向きに側転をする

何も悪いことは無かった。朝からギターを弾き、練習へ行き、その後ラーメンをご馳走になり、お喋りをして帰ってきた。なのに、なぜか眠たくて、頭が痛くて、お腹が痛くて、生きていることが許されている感じがしない。早く眠ってしまえば良いのに、それすら…

マルティーニ

My Bloody Valentineのsometimesを聞きながら湯船に少しずつ沈んでいくと、まるで死んでしまうような気がした。なんとなく、透明になりたくて、ご飯の量が、ほとんど無くなっていた生活。水曜日の練習のあと、お兄さんとラーメンを食べた。その後、私はチョ…

ベランダと洗濯機

季節は3月の初め、気温は2度前後だった。コンビニから買ってきたビールと缶チューハイを持って、ベランダへ出た。暖かい部屋にいた私たちの息は白く染まる。そのうちタバコを吸いだしたので、息が白いのか、煙草の煙が白いのか分からなくなってしまった。窓…

カレー

日付が変わって暫く、私はただ蹲っていた。二月が終わり、三月が始まっている。高校の部活の人達と集まり、だらだらとご飯を食べた。元々六人いた部活の面々だが、今日集まったのは四人だった。私と、友人と、部長と、もう一人。薄利多売を謳い文句にしてい…

ゼリー

朝から、得体の知れないもに責められ続けるイメージが拭えない。起き上がらなければ、そう思えど身体を動かせない。そのうち、怠け者、そんなふうに言うその声は大きくなっていく気がした。それでも、バイトには行った。行くと、友だちがキティちゃんのゼリ…

後日談

引き出物のカタログを捲り、しばらく考えたあと、真っ黒のマフラーを選んだ。いつか首を括って死ぬ時は、これを使うと思う。

前夜

I'll never be able to give up on youSo never say good bye and kiss me once againあたしは絶対あなたの前じゃさめざめ泣いたりしないでしょこれはつまり常に自分がアナーキーなあなたに似合う為現代のシド・ヴィシャスに手錠かけられるのは只あたしだけ…

1時間半

お兄さんは、コンビニやスーパーへ寄ると、「なんでも好きなの持っておいで」って言う。だから私は帰りの車の中で、ほうじ茶チョコと、抹茶のポッキー、代わる代わる食べていた。帰るまで1時間半くらいかかるし、そのお供にと、お菓子が二つ。何となく、Paul S…

朝の光と

ランディー・ローズが、お兄さんのiPadから流れていた。テーブルの上に並ぶ空の缶ビールは何本になっただろう。カーテンの隙間から仄かに薄くなるブルーが覗いた。ギターケースの上で、小さな紙の切れ端に、注意点が書き込まれていく。和紙のような質感。お兄…

幸福論

夕日が刺す部屋で、私は君を待っていて。少しだけ暑くて、窓を開けてみる。風が吹いて、しばらくすると、日が落ち込んでいくので寒くなる。そのまま肌寒いような空気に微睡む。水滴沢山つけたペットボトルからお茶を飲んで、それからパタリと倒れて眠る。起…

東京

「東京に行こう」と、友人は言った。それが、観光としてなのか、上京するということなのか、それらは、彼女から発されるまでの間に綺麗さっぱりと省略されていた。コンビニの窓の向こうには、仰々しいほどに空が赤く焼けてる。「向こうでバイトして暮らそう…

空の上の人

死んでしまった人が、生きていた頃、最後に作った曲を聴いた。私はその人のこと、何も知らないけれど、曲を聞いている。本当の終わりは死ぬことじゃないと知っているけれど、出来れば死なない方がいいことも、同じように知っている。電気ストーブの前で、低…

黄色の街

朝日が登る前の薄明かりの中、長い長い廃墟の階段を上がった。所々錆びている手すりが手ひらに小さな傷をつけていく。携帯がなっていた。この世の終わりみたいなけたたましい音量で鳴らす、ニルヴァーナの着信音。私はそれを無視して、ひたすらに階段を登っ…

空白に見つめられた

生後三ヶ月から幼稚園くらいまでを過ごしていた街。私は、茫漠とした幼少期という表現が好きだ。優しい灰色の靄に包まれて、ゆっくり明けていく空を眺めているような、もしくは、卵色のタオルケットに包まって、夕方の西陽に照らされているな、そんな写真1…

約束

今後お互いが音楽してたらまた同じステージに立とうね私の携帯に表示されたメッセージ。先輩からだった。静かで、責任なんてどこにも無くて、確定していない未来に向けられた言葉。それでも、芯の通った一文で、背筋を正される。この人は、いつだって絶対と…

その差、60cmに

地元のバンドの先輩に誘われ、ライブへ。フロアから、ステージまで。それが、月日なのか、運なのか、努力なのか、思い、なのか。私には分からなかったけれど、泣いてしまった。悔しさとかじゃなく、純粋に、演奏に圧倒されて。マイクスタンド倒してしまうほ…

装苑

クリサンセマムのリング、鈴蘭のピアス、友だちがくれたダイアモンドのネックレス、ブラックワンピースに、レースアップのハイヒール。私のことを守っていてください。冷たくて綺麗なものは、護身用の特別仕様。真っ白のBABY-Gの腕時計、真っ黒のパーカー、V…

1年の始まりの夜に

行き交う人。賑やかな屋台。寒くはなかった、あちこちから湯気。笑う人々の口元も白く霞んでいる。忙しそうな巫女さんたち。どこかのテレビ局のカメラ。隣で、彼氏の愚痴をこぼす友だち。全てが愛おしくて、全てが今にも無くなってしまいそうで、私はしゃが…