one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

寝言

花曇りが過ぎて、ついに雨になった。

薄く水を張った道路に、花びらが浮かぶ。


私は街灯を頼りに、ふらふらと歩いていた。


コンビニで買うソフトクリームだけで生活していた。

お兄さんが好きだと言っていたからかもしれない。

それだけは喉を通った。


道端に、チョークの落書きを見つけた。

消えかけの、名前がふたつ。


石、光、車、家、犬。

私の辛さは染み付いた。


どこへも行けない。

GREEN DAYで起きる朝だけが優しかった。

私の魚はボロボロになった尾ひれを必死にばたつかせる。

沈む、街の中に沈む魚たち。

ここで叫び声をあげる。


おばあちゃんの事を思い出して、

思わず仏壇の前で毛布にくるまって寝たくなる。

心細さに、私は心底飽き飽きしている。


優しい人の声ばかり再生ボタンを押す。

いつも、怖い犬が寝ている。

みんな夜は寝る。

自分にとっての夜に寝る。

もう目覚めたくないなんて陳腐な言葉で誤魔化されない感情。

産み落とされるのは、橋の上。

突き落とされてしまうようなことは無い。

マイスリーの包装紙。

弱りきった私たち。

明日が来るのなら、来るのだから。