one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

幸福論

夕日が刺す部屋で、私は君を待っていて。少しだけ暑くて、窓を開けてみる。風が吹いて、しばらくすると、日が落ち込んでいくので寒くなる。そのまま肌寒いような空気に微睡む。水滴沢山つけたペットボトルからお茶を飲んで、それからパタリと倒れて眠る。起…

東京

「東京に行こう」と、友人は言った。それが、観光としてなのか、上京するということなのか、それらは、彼女から発されるまでの間に綺麗さっぱりと省略されていた。コンビニの窓の向こうには、仰々しいほどに空が赤く焼けてる。「向こうでバイトして暮らそう…

空の上の人

死んでしまった人が、生きていた頃、最後に作った曲を聴いた。私はその人のこと、何も知らないけれど、曲を聞いている。本当の終わりは死ぬことじゃないと知っているけれど、出来れば死なない方がいいことも、同じように知っている。電気ストーブの前で、低…

黄色の街

朝日が登る前の薄明かりの中、長い長い廃墟の階段を上がった。所々錆びている手すりが手ひらに小さな傷をつけていく。携帯がなっていた。この世の終わりみたいなけたたましい音量で鳴らす、ニルヴァーナの着信音。私はそれを無視して、ひたすらに階段を登っ…

空白に見つめられた

生後三ヶ月から幼稚園くらいまでを過ごしていた街。私は、茫漠とした幼少期という表現が好きだ。優しい灰色の靄に包まれて、ゆっくり明けていく空を眺めているような、もしくは、卵色のタオルケットに包まって、夕方の西陽に照らされているな、そんな写真1…

約束

今後お互いが音楽してたらまた同じステージに立とうね私の携帯に表示されたメッセージ。先輩からだった。静かで、責任なんてどこにも無くて、確定していない未来に向けられた言葉。それでも、芯の通った一文で、背筋を正される。この人は、いつだって絶対と…

その差、60cmに

地元のバンドの先輩に誘われ、ライブへ。フロアから、ステージまで。それが、月日なのか、運なのか、努力なのか、思い、なのか。私には分からなかったけれど、泣いてしまった。悔しさとかじゃなく、純粋に、演奏に圧倒されて。マイクスタンド倒してしまうほ…

装苑

クリサンセマムのリング、鈴蘭のピアス、友だちがくれたダイアモンドのネックレス、ブラックワンピースに、レースアップのハイヒール。私のことを守っていてください。冷たくて綺麗なものは、護身用の特別仕様。真っ白のBABY-Gの腕時計、真っ黒のパーカー、V…

1年の始まりの夜に

行き交う人。賑やかな屋台。寒くはなかった、あちこちから湯気。笑う人々の口元も白く霞んでいる。忙しそうな巫女さんたち。どこかのテレビ局のカメラ。隣で、彼氏の愚痴をこぼす友だち。全てが愛おしくて、全てが今にも無くなってしまいそうで、私はしゃが…