one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

装苑

クリサンセマムのリング、
鈴蘭のピアス、
友だちがくれたダイアモンドのネックレス、
ブラックワンピースに、
レースアップのハイヒール。

私のことを守っていてください。
冷たくて綺麗なものは、
護身用の特別仕様。

真っ白のBABY-Gの腕時計、
真っ黒のパーカー、
Vivienne Westwoodのピアス、
ドクターマーチンのブーツは、
どこへでも行けるような気がする。

私の携帯のYouTubeを開いて、
椎名林檎の、自由への道連れを流しながら、
「いいね、自由って言葉好きだ」と言ったその人は、
缶ビール片手に、穏やかそうに笑う。
私にコンビニで好きなもの買うといいと言って、
1000円渡してくれたけれど、
不自由な私は色んなことを悩んで、

その人は私に、椎名林檎のイメージがあるとか、
わりと無茶苦茶なことを言い、
それなら、椎名林檎の真似事のようなバンドを組んでみればいいと勧めた。
歌に自信が無いと言うと、
今度カラオケに行こうと言われた。

この人がいなければ、
私はどうやってギターを弾けばいいのか分からなくなりそうだと思い、少し不安になる。

ピアスが夜風に揺れれば、
友だちからの着信が入っていた。

部屋に戻り、
着信履歴からかけ直す。

もっとさらっとした、しんとした人になりたい。
アミノ酸とビタミン Cのサプリが入ったボトルが、コロコロと部屋の隅に転がって消えた。