甘い唇
古い本から発せられる独特の匂い。
それだけのために、図書館の書庫で蹲り本を読んだ。
小学生の頃、南条あやさんの日記を読むために、
毎日ここへ来ていたことを思い出す。
貸出許可だったけれど、両親に見られるのが怖くて、
ここで一冊読みきった。
ここにある本は、総じて紙は茶色になり、
表紙が煤けている。
読む人がいなくなり、書庫という場所に閉じ込められ、
取り出しにくいほどぎゅうぎゅうに敷き詰められている。
私はその隅っこで、先週発売された、
新刊を持ち込んで読んでいた。
辺りの本すべてが、その新刊にどう思うのか、
私には知りようがないのだけれど。
夏になる、それでも私は長袖のまま。
本の塊から抜け出して、
喫煙所へ向かった。
ブラックデビルのチョコ味の煙草、
友だちからチョコ臭いと言われてしまう。
フィルターが甘いから、
唇まで甘くなる。
夏なので、
アイスを買って食べた。
知らない人に、話しかけられて、
めんどくさくてげんなりする。
明日はスタジオ。