one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

食べること、それから

しばらくまともな食事をしていなかった私の、

久々の夜ご飯はラーメンでした。

練習終わりに行く、いつものラーメン屋さん。

ギターのお兄さんと一緒に食べました。


運ばれてきたラーメン。

店員さんにお礼を言います。

お箸を割る音。

そのときわたしがそれを口に入れることが出来たのは、

四時間前に、泣きながら、

「死にたい」と訴えた私に、

お兄さんが投げかけた言葉を思い出したから。


ラーメン食べながら、私は、

自から死ぬことはしないと、決めました。

「死んだらギター弾けねぇやろ」って言ってたお兄さんは、

5杯目のラーメンを高菜3杯目と共に食べています。

すごい速さだなぁと思いました。

あと、死んでもギターを弾きたいというのは、

ほんとうにすごいと思います。


お店の外は今日もすごい雨で、

近くの駅は、屋根から雨漏りしているようでした。


食べ終えて外に出て、

自販機で飲み物を買ってもらいました。

お兄さんはミルクティー、私は緑茶にしました。

雨は勢いを増していて、そんな雨を見ながら、

飲み物を飲みました。

雨音の合間に、店員さんの元気な声が聞こえます。


家に帰って、日が昇るまで練習しました。

それから、お兄さんのNG集を見たりしながら、

そして、明るくなった部屋で寝ました。

煙草もお酒もなく寝ました。


一年前に

自殺未遂をしてから、もうすぐ一年になる。

最近、大きな低気圧がやってきて、

ものすごい量の雨を降らせているけれど、

確か、私が死のうと決めた日は、

今日に風を足した、台風のような日だった。


あの日の私は、まだ正社員で、薬局の事務をしていた。

なんとも性格のきつい上司がいて、

なんだか大変苦労させられたのを覚えている。

その日の上司は、

薬局長の挨拶さえ返さないほどの不機嫌ぶりだった。

その当てつけは私にもれなくやってきて、

お昼休憩の頃には、頭と胃が捻じれるほど痛く、

それでも思考回路は麻痺したようにぼんやりしていた。

近くの自販機で買った水で、

安定剤を規定量より少しだけ多めに飲んだ。

そしてタバコを吸いながら、

もういいや、今日死んでしまおうと思った。

それから午後の業務中は、

どうやって死のうかと考えていた。

飛び降りは、一ヶ月前に試みて、

足がすくんで動けなくなった。

なにぶん、臆病な性分だった。

首吊りは、見つけた人のイメージに残りそうだから避けたかった。

上から人が紐にぶら下がってゆらゆらしながら死んでいるところなんて、

私だったら見たくない。

死んでいるものが揺れるという、動くという、

そこが多分気持ち悪い。

その気持ち悪さは、バラバラ死体とかより、

本能的にくるような気がした。


私が出した結論は、服薬自殺だった。

詳細に覚えていないけれど、あの時私は、

ハルシオン5シート

レキソタン5シート

デパス10シートを溜め込んでいた。

それらをお酒と飲めば、

まあ、運がよければ死ぬかなと思ったのだ。


会社を出る時、私に唯一優しくしてくれた、

大福みたいなオタクのお兄さんにだけ、

いつもより深く、丁寧に挨拶をしたのを覚えてる。


家に帰る途中、スーパーの医薬品売り場で、

ブロンと風邪薬を買った。

貯めてる薬だけでは、心許なかったから。


一旦家に帰り、お気に入りの服に着替えた。

そして、暴風雨の中をコンビニへ行き、

その時好きだった和菓子を買った。

自室に持ち帰ると、それを食べた。

そして、好きな人と同じくタバコを吸った。

アメリカンスピリットのライト。

それから、お酒と薬を飲みまくった。

雨も風も面白くて、窓を開けた。

風が強かったし、雨も冷たかったけれど、

少しだけ気持ちよかった。

あとはもう、覚えていない。


病院についてからの記憶が少しある。

でも、辛いと聞く胃洗浄のことは、

全くと言っていいほど、覚えていない。

目を覚ませば、病室。

ありきたりな感じがして少し拍子抜けした。

看護師さんが、優しく話しかけてきていたけど、

頭がぼーっとして、うまく返事ができなかった。

死ねなかったんだなぁと、その時やっと実感した。

安心も後悔も無かった。

すっきりした心持ちではあったけれど、

まっさらで、感情が見当たらなかった。


何時間かぼーっとしていると、

周りの状況が分かるようになった。

個室ではなく、救急センターのような場所のようで、

広い場所に仕切りがあり、

たくさんの患者さんが寝ていた。

その間を看護師さんや先生が巡っている。

私は手につた点滴を見た。

少しだけ血を逆流させたりした。

その日のうちに退院できて、

私は友達に会いに行った。

そしてその日、始めてギターのお兄さんと、練習をした。

そんな日。

夜ご飯は、ハンバーグを友だちと食べようとした。

でもやっぱり全部を食べれなくて残した。

友だちと話している途中、

ああ、死ななくても良かったかもと、

なんとなく思った。


それから、自分を少しだけ楽にしてあげようと思い、

次の日付で、会社を退職した。

晴れてさえいなかったけれど、

穏やかな曇りだった。


こんな感じで死のうとして、死ねなくて、今に至る。

この後二ヶ月のニート期間を過ごし、

始めたバイトは半年と少し続いている。


それでも今、死にたいと考えてしまう。

前回は仕事の人間関係とかが原因の殆どを占めていた、

今回はまあ、見捨てられたような、

置いていかれているような、

そんな不安が毎日続くのでしんどいという感じだ。

かれこれまともな食事なんて、

一ヶ月取っていない気がする。

一年に一回自殺未遂なんて、定期的にするものでもないだろうに。


電話越しに聞いた怒鳴り声と、

勝ち誇ったような言葉が、

空耳か幻聴になって私を取り巻く。

やめて欲しい。

夢を見れば、友だちが遠くに連れ去られる夢。

私はいらないと言われる。

そんなものばかり。


それでも、

今夜だって、希死念慮を安定剤と飲み込んで、

うまく消化しようと足掻いている。



悲しさを振り切って

私は、悲しくて、悲しくて、

少し早めに出した扇風機の、「弱」のボタンを押して、

そのままずっと、泣いた。

出てくる涙は扇風機に乾いていくから気にならない。


携帯を開いて、SNSに「もうだめだ死にたいー!」と、

書き込んで寝ようとした。

すると、好きな人から、「なんでだー!笑」って、

コメントが来ていた。

なんでか、考えた。

今日お客さんが怒って帰ってしまわれたこと。

最近続く不眠。

友だちからLINEの返信が来ないこと。

伝えたいことほど、伝えられないこと。

どれが理由で、死にたいのか。

長い間考えて、結局、「なんとなくー!」みたいな返信をした。


そのあと少しだけやり取りをして、

まぁ、爆音でギター弾きなよみたいなアドバイスされた。

私は爆音でギターを弾く。

悲しいの振り飛ばし方、一つだけ覚えた。

淡水の世界から

先日から続く鬱状態は未だに尾を引いています。

引き金となった出来事は、まあなんとなく分かってる。

一人ぼっちにされたような気がした。

本当に怖くて寂しい。

誰かに傍にいてと願うのに、

誰のことも気遣えない状態の自分が怖くて、

誰にも近づけなくなっていく。


窓の外が薄ら明るくなっていく様子を見つめながら、

効かなかった眠剤とアルコールの缶を捨て、

お気に入りの煙草を取り出した。

私の寂しさは煙のように溶けて消えず、

残り香のようにしつこくまとわりついていた。


この世に生まれてくることは、

淡水の魚が、大きくて綺麗で残酷な海に放たれるようなもの。

塩水の中で一瞬のうちに息絶える。

でも、その苦しみの中の一瞬で、

怖いほど美しい海という世界を見る。


今日はスタジオ。

お気に入りのキャミソールとロングスカート、

着心地最高のパーカーを身にまとい外に出た。

午後7時。


コンクリートに残る熱を、

サンダル越しに感じる。


家の中からは弟の先生の声。

不登校の弟に、

なにやら必死に話しかけてる。

この先生の声、好きな人と似ている。

もう少し聞いていたい気がしたけれど、

遅刻してしまっては申し訳ない。

昨日ほぼ徹夜で練習したアルペジオ

きっと弾けると自己暗示。


スタジオにつくと、イベンターのお兄さんと、

ギターのお兄さんが話をしているところでした。

なんとなくそこに混じって話を聞いていました。

ここにいる人たちの話は、

なんでいつもこんなに面白いのかな。


練習始まって、

T.Rexのイントロ弾いたり、

課題のアルペジオ弾いたりしました。

お兄さんのアーム付きのギターも少しだけ貸してもらったりしました。

毎回新しい何かを見たりすると、

その度にとても欲しくなってしまう。


練習終わってからも、

スタジオの外で有名なリフを聞いたり、

弾いてもらったり、

音楽のジャンルについての話をしました。

そのうち、あっという間に12時近くに。

ラーメン食べに行こうということになりました。


お兄さんの車の前に車が止まっていて、

出れなそうでしたが、

なんとか脱出してラーメン屋さんへ。


朝からポカリしか飲んでいなかったけれど、

結局、替え玉まで奢って頂いてしまいました。

美味しいラーメンと楽しい話は最高です。

今度飲み行こうという話になり、

日程の調整を任されました。

お店はお兄さんが探しておいてくれるそうで、

とても楽しみです。


「最近、あんま人見知りせんくなったね」

って言われたのは、少しだけ嬉しかったです。

なるべく、人と関われるようになりたい。


食べ終わって、車の中で少しだけ話をしました。

プライドとか、自我が私から感じられない。

それは、音楽をやる上で、ある程度必要なものだよ、

ということでした。

言い換えると、こだわりなのかもしれない。

こだわりのない音楽には、核となる部分がない。

それは、空っぽです。

お兄さんや、お兄さんのバンドのボーカルさんは、

とてもそれが強いそうです。

それゆえ、衝突もあると聞きました。


私は、まだぶつかる事が怖い。

人見知りと違って、これを正すには、

もう少し時間がかかる。

まず、自分の思いに気づくところから、

少しずつ始めようと決めました。


今もなんだかあやふやに悲しい。

実態を伴わない感情。

海が見たい。

弱い季節

帰宅するなりベッドの上で足を投げ出して、
そのままアルコールの入った缶をぷつりと開ける。
小さな穴からいくつかの気泡が浮かんでくるのが見える。
薄曇りの今日も、空は薄らと赤くなりかけていた。
そのまま500ml飲むだけではどうしようもない気分なので、
そこら辺の薬局で買ってきた、
軽い睡眠補助薬のようなものを合わせる。
アルコールとそれが私を赤くする。
窓に目をやると、空もだいぶ赤くなっていた。
赤くなって、青が混じり、濃い青だけが残った。

未だ私は赤いまま、
好きな人と同じ銘柄の煙草を吸った。
窓を開けていたので、
そちらに煙がすうっと流れるのを、
少しだけ楽しみながら眺めていた気がする。

このくらいから記憶がはっきりしない。
携帯にギターを弾きながら歌っている自分の声が録音されていたり、
スケジュール帳に覚えのない予定が書かれていたりした。
何故か服を着替えていたし、
化粧もしていた。
でも多分、どこにも出かけてはいない。
この状態の私は、脱いだ靴を片したりしないし、
そして玄関に私の靴はなかった、
裸足で出たにしては、足に汚れがなかった。
誰にも合わないのに格好だけ整えて、
1人で寝落ちている自分。
なんという独り相撲。

こうなりたくて、やっているくせに、
素面に戻って自分の失態を見ると、
いつだって悲しくなる。
最後のセーブがかかっているのか、
友だちや知り合いに影響があるようなことは、
いつだって無かった。
外側の誰にも知られないけれど、
ただひたすらに自分を嫌いになる。

1人で冷静になって考える。
考えることは、時に危うい。

今はただ、好きな人に会いたい。
それは、恋愛感情的なそれではなく、
私のことを、肯定し、許してくれる人に、
そばにいて欲しいだけなんだろうけど。

雨が降り出して、私は色んなことを諦めた。

明日を探す

私の中の何かがコロコロと動く。

冷たくて硬かったけれど、

透き通っていて、たまにキラリと光るもの、

右の指先にコツリとぶつかると、

そのまま左の指先まで転がっていったり。

足のつま先に重たく沈んでいたりもする。


一昨日、ベースがとっても素敵で、

お話もとても上手なお兄さんに届け物をしに行った。

すごく喜んでくださって、

「おじさんお金だけは沢山持ってるから笑」って言って、

私に余分に千円渡して、

そんなにいらないと言っても、

絶対に返させてもらえなかった。

ブラックモンブランでも、

たくさん買いなさいと言われました。


そのままドラムのお兄さんと一緒に三人で話した。

お二人はとても話が上手なので、

私はとても楽しかった。


「スタジオ見ていく?」って聞かれたので、

「お願いしますっ」と答えました。

スタジオの中に入ると、

真っ赤なドラムがありました。

備え付けのではなく、

お兄さん個人のドラムセットみたいでした。

私は邪魔にならないように、

備え付けのドラムセットの中に隠れます。


それから、夢みたいな時間でした。

夢だったのかもしれなくて。

私は、この場所が本当に好きになりました。


私みたいな人にも話しかけてくれる人がいて、

素敵な音楽を作ってる人ばかりで。


私のことを後輩と呼んでくれる人がいて、

一人じゃない気がしました。

ここになら、居場所があるかもしれないと思いました。

すごく嬉しくて、

そして何より、絶対に私も、

ここにいる人みたいに、

心動くような、音楽を作りたいと思いました。


下手だと言われるし、

指も小さくて少し悲しかったりするけれど、

絶対に。

飛び込む先に

週の終わりの始まり金曜日に向けて、

明日には私何も変わらないけど、

きっと少しでも何か見つけたくて、

夜の青の中にダイブしていく。


バイト終わり、

友だちとピクニックへ行く。

晴天じゃなかったけれど、

ひきこもりに優しいくらいの気候で、

私たちは二人で、

レジャーシート広げて、

友だちの作ってくれたお弁当を食べた。

タコさんウインナーに卵焼き、

ベーコン巻き、トマトにおにぎり2個。

唐揚げ、冷凍以外の初めて食べた。

あんなに美味しいんだ。

好きになりました。

公園に、仲良く遊ぶ親子。

少し悲しくなりかけて、友だちとふざけ合う。

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その後、コンビニでジュース買って、

スタジオに行く。


スタジオは、ライブハウス併設で、

今日ライブなので人がとても多い。

待合室で、好きな人と、

その他にも、いろんな人たちがいて、

少しずつ挨拶とかお喋りとか。

好きな人はお酒片手に、胡散臭い笑顔。

いつもより少し背が低く見えるのは、

横にいる動物の名前のお兄さんが、

180cm超えるくらい背が高いからかな。


5時になって、スタジオへ入る。


私はここで、何者かになりたいと、

どうしても願う。

ステージに立つ好きな人が、

「あー!楽しい!」と叫ぶ。

いつもより少しだけ胡散臭さが薄くなったように見えた。


あの場所はいつか自分が居た場所。

だけれど、全く別の世界に見える。


みんなが、戦いながら笑ってる場所、

そこに行きたい。

そこで、負けずに立ち続けたい。