one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

東京

「東京に行こう」と、友人は言った。


それが、観光としてなのか、上京するということなのか、それらは、彼女から発されるまでの間に綺麗さっぱりと省略されていた。


コンビニの窓の向こうには、

仰々しいほどに空が赤く焼けてる。


「向こうでバイトして暮らそう。貯金はできないかもしれないけれど、毎日暮らすことくらいならできるさ」


私はしばらく、

限りなく質素で、お気楽で、贅沢の限りを尽くした生活を思い浮かべた。


「荷物はギターだけでいいかな」と返すと、

「私は煙草だけでいいかな」と彼女は笑った。