空の上の人
死んでしまった人が、生きていた頃、
最後に作った曲を聴いた。
私はその人のこと、何も知らないけれど、
曲を聞いている。
本当の終わりは死ぬことじゃないと知っているけれど、
出来れば死なない方がいいことも、
同じように知っている。
電気ストーブの前で、低温やけど寸前まで温まっている。
明日には火葬されているかも知れない私たちは。
真冬なのに、
キャミソールだけで外に出る。
長距離走れなくなった私の車まで、
シールドを取りに。
体力がないのは持ち主と同じだなぁと笑ったって、
車検とか、そういう社会の仕組みは許してくれない。
私が会社で働けないのも同じこと。
許してもらえないし、許してくれないこと、私も許さないから。
お兄さんのバンドのドラムの人と、
今日は寒いねー!って会話をした。
今日は寒い、明日もきっと。
そのくらいの予想ができる範囲の日常で。
それくらいの優しさが残る毎日で。
缶コーヒーの暖かさも冷めていく。
ずっと、なんて言葉は、期間や期限の話じゃなくて、どのくらい、という程度を表してるんだと知っていく。
ずっと、そう言いたいくらい、それを信じてほしいくらい、好きだとか。