one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

初夏へ

来月にはもうここにいないとを知っているから、どうしても何を見ても悲しくなってしまって。

駅からの帰り道、泣きながら家に帰った。

私は何か大切なものを無くしてしまって。

もう取り返しがつかないのではないかって、


さてと一言前置きを

昨日の夜の話から。

まあ、日付なんかの正確性は誰も彼も曖昧なんだから意味をなさないということ。

要は、みんな結局寂しいよねという感じだ。


好きだった人から連絡が来た。

本当に好き「だった」という感じになってきて、体良く躱すのは良心の呵責で体が軋む、ぎしぎし。

今じゃない、あなたに優しくして欲しかったのは、

連絡が来たらすぐ起きれるように着信音最大にして夜寝てたのは、2年前の私なんだよ。

その頃は放っておいて、今更そんなに大事にされたって、困ってしまうんだよ。助けてくれ。


友だちが恋人との待ち合わせによく使うらしい大型スーパーで、トリートメントとヘアパックとボディーソープとクレンジングとリップと仕事用のボールペンを買った私は、ぶどう1粒と自転車を漕いだ。

何でこんなに虚しいばかりなのか、買い物の量を見て笑う。

太った店員さんは、ボールペンが軽すぎてレジに反応せず戸惑う私のせいで、しばらくの間見守ってくれていた。

ありがたいと思う。


鼻の横に出来た大きなニキビは少し痛みを持った。

ズキズキと煩わしいような、でも手放しがたいような不思議。


明日は休みであるから、本当は会ってあげたかったけど、雨だしね。

たくさん眠りたかったのごめんなさい。


M先輩は、結婚してしまうのかな。

私はそれは悲しくて仕方が無いような気がした。


休みの前日なのに、髪がさらさらで、少し馬鹿馬鹿しくなった。

4月になるのに、まだ電気ストーブがしまえない。

元気に温めてください。寒いので。




朝になって目が覚める前、

3時頃のこと、好きだった人に嘘をついた。

朝起きて頭が痛んだのは、バチが当たったからだと思う。

お天道様が見てるというのが本当なら、

私はどう見えているんだろう。碌でもないのかな。

それはそれで、かな。


ウィンストン・チャーチル」という映画が見たい。

ヒトラーから世界を救った人だそうだ。

世界は、何人かのヒーローみたいな人の活躍で、ギリギリ存続しているのだと思うと、少し安心できる。

あと、コナンも見たい。子供の頃からあのアニメは好きだった。

ミステリの小説は読むと疲れてくる(好きだが、何となく形式ばった格式の高さが鼻についたりするのか、鬱屈とした、これから人が死ぬぞという雰囲気がおどろおどろしいせいかもしれない)が、あのアニメはそういったことがなく、テンプレートの繰り返しが主だからだろう。

お年寄りが見てる水戸黄門(放送終わったのだっけ?)に近い。


顔を洗って頭痛薬を飲んだ、ニキビが気になるので、昼食は玉子焼きとお粥と納豆の日本食セットを作った。


ifという香水を買った。

「もし〜ならば」「〜かどうか」

そんな意味だったと思う。英語は苦手だしあんまり覚えていない。

柔軟剤や入浴剤の香りに近いそれを、私はとても気に入った。

見た目もシンプルで、有名ブランド達の誰かを傷つけそうな華やかさがなかった。


透明な毎日が、どこかで消えても。

鉄塔を見上げる日の風の温度

鉄塔と、背の高い真っ直ぐな草

曇ガラスから零れるオレンジより濃い赤の夕焼け

据えたタバコの匂いが染み付いたスタジオ

自動販売機の明かりと水滴のついたコーラ


その場所に風が吹いていたか想像すること。
そして、そこに存在してみること。






セーターと桜

セーターを着て、ホットコーヒーを飲んで、
電車に乗りこんで気がついた。

車窓には桜が映り込み、揺られる人は皆、一様に衣替えを済ませていた。

毎年の事だけれど、人一倍寒がりな私は衣替えが遅れる。
ふとした時に気がつくと、それがひどく恥ずかし事のように思えてならない。
今日は、このまま早退してしまおうかと思った。
それでも、有給の申請を提出する面倒は手に負えないような気がしたので、会社へ向かった。

携帯の天気予報は、24°を表示している。
好きな人からは、花粉症が辛いという内容のメッセージがきていた。

私は休憩時間中に、適当なサイトから4万円ほど春服を注文した。
今年着ていた冬服は、多分全部捨ててしまう。
暖かくなるにつれ食欲が落ち、
サイズが合わなくなってしまっている。

夏になればかき氷に蹲るのだろうか。


いちごと食事

いちごばかり食べているなんて言えば、
視覚と寓想だけで食事をしていると揶揄されそうなものだが、どうしようもないのが現実だった。
いちごは可愛いものではなく、美味しいものではなく、特別なものであるだけのような気がしている。
日々の生活の中の、少しの柔らかい部分という扱い。

追慕

私はすぐに泣く。
じっと感情を抱きしめていることが出来ないから、すぐに手放して蒸発させてしまう。

春になることが予測された頃、
つい先週のこと。
職場の先輩の部屋で好き勝手くつろぐ私に、
「ギター、今日は持って帰るといいよ」
私は何気なく頷いて返事をした。

コーヒーからは湯気が出ていたし、外は晴れていた。

存在としての不安

いつから、いつからだろう。


父親がわりに年上の人とばかり関係を持ったことも。

信頼していた人が結婚してしまったことも。

大切な友だちをどこか遠くに感じるようになったことも。


手首を切らなくなった私は、

また、後戻りすることなどないと過信していた。

本来自分はとても弱い人間であることを忘れていた。


駅へ向かう車の中、

「コーヒー飲む?カフェでも行こうか?」と問う優しい声を聞きながら、

私の意識は宙に浮いた。

水位が急に上がってくるのが分かる。

私は溺れているようだった。


上擦った、醜く甲高い声がする。私だ。

完全に自分からすり抜けた私は、他人事のように思った。


車は、おそらく日本で最も有名なコーヒーチェーン店へ到着した。

すり抜けるように助手席から降りると、

外の空気を吸い込んだ。

明日には雪が降ることを、私も知っている。


店内は暖かく、ゆっくりとした空気が流れていた。

「カフェラテ、ホット、トールで」

「ココア、ホットのトールお願いします」

注文を済ませると、大学生のような風貌のスタッフは、明日から始まるというバレンタイン商品の説明をして、「また是非お二人でいらしてくださいね」と言った。


あぁ、恋人同士に見えたのかと思い、心がぐちゃぐちゃになる気がした。

私はすんでのところで感情を消した。

そして、「美味しそうですね~!またきます」と嘘をついた。


それから3時間、私たちは店内の窓際の席で取り留めなく雑談を続けた。

今日、私を不安な気持ちで帰すことにならないよう、気を使われていることは分かっていた。

だから明るく振舞ったし、不安な素振りなど見せなかった。

いつもそうだ、助けてと言えない。


そしてそのまま駅まで送ってもらい、近所のコンビニでカッターを買って家に帰った。

つまりはそういうこと。


悲しいことなんて、大体は仕方の無いことばかりだ。

生まれた時から決まっていたことに対して、

ここ何年か知り合った私が我儘を言えるわけがない。

私だって、もしかすると、生まれた時から手首切って泣きじゃくる毎日が確定していたのかもしれない。


そう思うと、余計にこみ上げてくるものを抑えられなかった。