one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

隕石が落ちてくる街を眺める話

わざと、真っ暗にしてる部屋の中。

パソコンの明かりは薄らと私を照らしていた。

SLAYERとMEGADETHのCDをウォークマンに入れる。

午後の紅茶シトラスティーが、ひたすらに甘くて、辟易としていた気がする。

読み込み中という文字をパソコンが表示している。

時間がかかりそうだったので、適当なスープを冷蔵庫から取り出して、電子レンジにかける。

残り時間のカウントダウンをぼうっと見つめていた。

多分残り25秒くらいだったと思う、私の携帯から、けたたましく鳴り響くNIRVANAの着信音。

画面には好きな人の写真が映し出されている。

電話に、少し震えそうな声を、必死に抑えて応じる。


「元気にしてたー?」

どうやら、私のバイト先に行ったものの、既に私は退勤していた後だったので、なんとなく気になって連絡してきたらしい。

どんな流れか、夜景を見に行くことになる。

紺色のワンピースに、灰色のカーディガン羽織って家を飛び出した。

携帯の充電は16%だったし、パソコンは放ったらかしにしていた。


私たちは、無事再会を果たして、北へ進む。そして突き当たった山をどんどん登って、神社のような場所に出る。

車を降りた私たちは、ほぼ同時に空を見上げた。

星が降るような夜、とはよく聞くけれど、

そんな夜だと思った。


好きな人は、私のことが心配で仕方が無いと言う。

過保護になりすぎてしまいそうだと。

私は言う、

「なんとかやっていっているではないですか。これでも、頑張っているのですよ」と。

好きな人は少し困った顔をしながら、そうだねぇ、なんとか頑張っているのはよく分かるよと、小さな声で呟いた。


私たちは手を繋いだまま、夜景をぼうっと眺めた。

夜景は綺麗で、夜行性の私たちのような人たちの存在が、沢山あるのだなと思った。

そんなことを考えていたら、唐突に好きな人が口を開く、

「本当に、星が降ってきたら。とか考えてしまわない?」

私は、夜景から目をそらさずに答える。

「それを、真剣に考えてしまうと、たくさんの隕石襲来で大パニックですね。」

目を伏せてそれへの返答。

「うーん。まず街は燃えてしまうだろうねぇ。ここは大丈夫だといいな」

好きな人の方へ向き直る私の言葉。

「今日、ヒールを履いてきてしまったので、できればスニーカーが良かったですね。あちこち歩き回って、必要なものを探したりしなければならないでしょう」

ああ、本当に、今この瞬間、私たちが住む街が終わっていくのを見たかったような気がした。

この場所はとても素敵な場所なので、燃えたりしないでしょうし。