one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

共感につき

最近あまりに傷つくので、

共感することを、初めは無意識的に、最後には意識して、サボっていた。

いつだって人との関わりで悩んでいたし、

ずっと苦しかったから。

人に意識を向けず、自分と一人遊びに興じた。


そんな時、ギターのお兄さんが、

「今日、練習のあと、うちで飲み会しよう」と言った。

それはそれは楽しい飲み会だった。

車に乗せてもらい、少し遠くの、お兄さんの家まで向かった。

車の中での話は、結婚や、バンドや、共通の知り合いの話。

とめどなく話して、頷いて、笑った。

途中でドンキに寄り、アサヒスーパードライ350ml缶6本パック、

お兄さん曰く、飲みやすいらしいスパークリングワイン大きいの1本、

それから、私用に、お菓子を買う。

お兄さんは目立つ。とにかく目立つ。

深夜のドンキの来客の面々は、それぞれに皆派手ではあったけれど、

群を抜いて目立つので、一緒にいるとても平凡な二十歳の小娘まで目立ってしまい、

人の視線に慣れていない私は、

こんな視線の中で生きているお兄さんは凄いなぁと、素直に思った。

聞いてみたら、慣れだという。

セブンイレブンにも寄って、そこでおでんと、あと、生ハムを買った。

完全な飲み会。

欠けたものはほぼ無いくらいに最高だった。

ワイングラスにビールを注いだ。

注ぎ方も教えてもらった。

TVではタレントが何人か座って話しており、

この人は綺麗だ、いや、そうでもない、などと、二人で勝手に話し合ったりした。

それから、結婚式の招待状の、返事の書き方をその場で教えてもらった。

親がしてくれないこと、こうやって周りの人が助けてくれるから、

私はなんとかやっていけるのだなぁと思う。

それも終わるとギターを調節して貰った。

そして、弾いてもらったり、弾いたりしながらだらだらとお酒を飲んだ、

途中いろんな話をした。

家庭の話とか、昔の話とか、新しい冷蔵庫や、喋る空気清浄機の話。

お兄さんも私もお酒に酔い潰れることなく、

朝の9時を過ぎた。

流石に眠くなっていた私は、あっという間にそれを見透かされ、お風呂を借りて、

パジャマまで借りて、でも、ソファの上で寝るのは忍びなくて、

お兄さんが寝室へ行ったあと、

床で丸まって寝た。


しばらくすると、お兄さんがこっちに来る音が聞こえて、

半分寝てる状態で、なんとなく起きずにいた。

私の近くに来たお兄さんが、

「ソファー使っていいって言ったのに…」って言ってるのはなんとなく聞こえていた。

ふわりと掛けられたそれは温かくて、心地よく眠れた。

家のベットなんかより、数倍。


次の日というか、数時間後、

私はバイトに向かうため、目を覚ました。

ぼんやりする頭で、

とりあえず着替えて、少しだけ片付けて、

お兄さんに声をかけた。

お兄さんはすぐに起きて、

車で私を駅まで送って、傘まで貸して下さった。

お礼と、良いお年をと並べて、お別れしました。


その日から、揺らいだ。

今まで共感せず、他人に心を左右されずに居たから、

その反動は酷かった。

あれだけ楽しいことの後なのに、

むしろ、楽しかったからこそ。


毎日急に死にたくなり、ギリギリのところで息をしていた。

全く関係の無い人たちの、言葉でも、

少し攻撃的なことが聞こえると、

言い知れぬ恐ろしさが拭えなかった。


人と関わることの楽しさを実感しても、

人の優しさを感じても、

前みたいにまた傷つくことが怖かった。

小学生の頃、感受性が強いなどと、

連絡帳に書かれていただけはあった。

要は、傷つきやすかったし、

なぜか傷つけられやすかった。

ずっと、ハリネズミのジレンマのようで、

私は、果てしないほどに臆病だった。


家を飛び出して死のうとした。

お兄さんから、結婚式の二次会の連絡が来て、返信考えてるうちに寒くなって、

気づけば私はパーカーにスキニーだけだったりして、

それは寒いに決まってるし、

もうどこにも行けなくなって家に帰ったりした。


限界まで寝たり、

全然寝なかったり、

お菓子しか食べていなかったりで、もう集中力はバイトにも差し障るレベルだった。

顔色もそうとう悪かったらしい。

そんな私を見かねた友人は、

遊びに連れ出してくれた。


友人おすすめのワッフル屋さんへ行き、

美味しいパスタとワッフルを食べた。

服屋へ行くと、友人は、いろんな服を似合うね、

それも可愛いねと声をかけてくれた。

どれだけ周りに恵まれているのか分からない。

助けられすぎなくらい、私は人に支えられていた。

そんな人が、1人で完結していようとして、

それでまるで強くなったように思っていたのが間違いだと気づいた。


年の終りは、何だか全てを精算させられてるような気分になる。

間違って、間違いに気付かされ、連れ戻してもらった。そんな感じ。

優しくて真っ直ぐな、お兄さんと友だちに、良い年が来ますように。


買い物の途中で買ったスケジュール帳。

来年、このノートを使い切ること、

一年生き抜くこと。