one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

シャンプーとピアス

シャンプーから始まる色んなものを、
髪につけは流すことを繰り返した。
最後にシャワーを浴びて、水を切る。
ベランダからとってきたTシャツを着た私は、ふろーらる、な香りになっている。
甘ったるくて、あまり好きな香りではないけど、髪も体も、酷く乾燥しやすく、このメーカー以外だと、うまくいかない。
私は香りを振り切るように冷凍庫まで来て、
チョコレートとビールを取り出した。
水槽の酸素を送り込む機械の音が、息苦しい程に静かだった。
一本目を空にすると、ヘアミルクをつけて、
ドライヤーで乾かす。
甘いふろーらる、な香りが、安物のドライヤーで焦げていく。
たくさんの花が焼かれる匂い。
火葬場?
なんとかまとまった髪を櫛でとかして立ち去る。
二本目の缶ビールを開けたとき、
隣の家から、笑い声が聞こえた。
私より先に死んだら殺すと、弱気になっている私を脅す友だちの声が、薄らと思い出されて、私は軟骨用のピアッサーを二つ、右耳のために注文した。
友だちの結婚式の招待状と、タブ譜が並んで落ちていた。
私はどっちつかずの顔をしながら、
LINEの返信をスタンプで終えた。