one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

長袖の私と七月

七月になった。

私は未だ、長袖を着ている。

扇風機の音だけは、鳴り止まずにそこにある。


今日、ふと気づいたら、

コード譜が読めるようになっていた。

今までも、意味がわからないわけではなかったけど、

タブ譜の方が、読みやすいなぁと思っていた。

それが、突然スラスラ読めるようになっていたので、

七月の魔法かなにかかと思った。


とりあえず、iPhoneを取り出して

クリープハイプコード譜を検索する。

ボーイズendガールズがあったので、

弾いてみる。

弾けた。

楽しくて、四時間くらい弾き続けた。


窓を開けると、

涼しい風が吹いていて、

なんとなく、寂しい気持ちになる。


私が夏になって思い出すであろうあれこれを、

全く思い出さずに夏を過ごすであろう人のことを思い、

少しだけ泣いた。

でもやはり、思い出す機会がないくらい、

あの人には今を楽しんでいて欲しいとも思える。

あれから、

体重は5キロも減っていったし、

泣きすぎて脱水のような心持ちになり、

毎日3リットルくらい水を飲んでいる。


夏祭りで見た花火が消えていくように、

人の記憶も消えてゆくのだとしたら、

文章にしてまで、

それをつなぎとめようとする私は滑稽なのかな。


私は誰の夏を生きることが出来ないようだから、

せめて、自分らしく過ごしていきたい。


マイスリーで見る夢に、いつも出てくるあの人に、

話してみたいことがあるんだけれど、

それもきっと夏の話になる。


ムーミン、みたいな響きで暮らそう。


すべてが一時停止するような夏の風景は、

いつだって好ましく思う。