one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

弱い季節

帰宅するなりベッドの上で足を投げ出して、
そのままアルコールの入った缶をぷつりと開ける。
小さな穴からいくつかの気泡が浮かんでくるのが見える。
薄曇りの今日も、空は薄らと赤くなりかけていた。
そのまま500ml飲むだけではどうしようもない気分なので、
そこら辺の薬局で買ってきた、
軽い睡眠補助薬のようなものを合わせる。
アルコールとそれが私を赤くする。
窓に目をやると、空もだいぶ赤くなっていた。
赤くなって、青が混じり、濃い青だけが残った。

未だ私は赤いまま、
好きな人と同じ銘柄の煙草を吸った。
窓を開けていたので、
そちらに煙がすうっと流れるのを、
少しだけ楽しみながら眺めていた気がする。

このくらいから記憶がはっきりしない。
携帯にギターを弾きながら歌っている自分の声が録音されていたり、
スケジュール帳に覚えのない予定が書かれていたりした。
何故か服を着替えていたし、
化粧もしていた。
でも多分、どこにも出かけてはいない。
この状態の私は、脱いだ靴を片したりしないし、
そして玄関に私の靴はなかった、
裸足で出たにしては、足に汚れがなかった。
誰にも合わないのに格好だけ整えて、
1人で寝落ちている自分。
なんという独り相撲。

こうなりたくて、やっているくせに、
素面に戻って自分の失態を見ると、
いつだって悲しくなる。
最後のセーブがかかっているのか、
友だちや知り合いに影響があるようなことは、
いつだって無かった。
外側の誰にも知られないけれど、
ただひたすらに自分を嫌いになる。

1人で冷静になって考える。
考えることは、時に危うい。

今はただ、好きな人に会いたい。
それは、恋愛感情的なそれではなく、
私のことを、肯定し、許してくれる人に、
そばにいて欲しいだけなんだろうけど。

雨が降り出して、私は色んなことを諦めた。