one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

寂しい建物、あと、大きな木と二匹の犬

初雪を見ながら、バイト先で、ゴミ箱のビニール袋、
取り出してる時、ふと、思った。
このタイミングで、考え事のスイッチが入ってしまった。

いつも突然くるこの感じ。
いつも適当に巡らせていた考え事が、
一気に繋がっていく。
そして私は、それについて考えることを止められない。
透明な袋は、風に煽られ、ばさばさと音を立てて、
あっという間に大きく膨らんでいく。
その中に、風と雪が舞い込む。
この地域にしてはめずらしい、
水気の少ない、道路の上を走るような雪だった。
私は広がる袋と、
飛んでいきそうなゴミと格闘しながら考える。
お客さんは背中を丸め、前傾姿勢で店内に入っていく。
私の指先は寒さでかじかみ、仄かに赤みを帯びた。
なにも気にならない。

今日見た夢の話。
私は、大きな学校みたいなところに住んでいて、
そこには私と、すごく大きなが一本と、
大きな犬が二匹、住んでいるらしい。
大きな木はあちこちの壁やら床やらを破り、
とても自由に大きく育っていて、
葉の部分は、ほとんど外にあった。
建物の最上階は、
ガラス張りの丸い吹き抜けのようになっていて、
そこに二匹の犬がいた。
とても立派な堂々とした犬。
一匹はとても怖そうな見た目の、優しい犬。
すごく早く走る。とてもかっこいい。
もう一匹は、穏やかそうによく寝ている。
たまに起きて、ゆっくりこちらに来る。
私は大きな建物に一人きりなのが寂しくて、
ひたすら大きな二匹の犬に甘えたりじゃれたりしていた。

満杯になったゴミ袋を捨てに行きながら、
なんとなく自分を分かった気がした。
私は寂しくて、父親や、母親の代わりが、
どうしても欲しかったのだ。
そして、私は多分、
その役目を好きな人やお兄さんに、勝手に押し付けた。
そんなことをしているせいで、
あんな夢を見たのだ。
あの二匹の犬は二人だ。
なるほど。
友だちから、まるで最近の私は、
赤ちゃん返りしているみたいだと言われる。
きっと私は、
初めて信頼できる大人に出会って、
まさか、この人たちに育てられたいと思ってしまった。
赤ちゃん返りのような私の幼い感情表現は、
多分そのせい。
友だちは、単に今まで、
自分の感情を抑えすぎてきた反動だろうと、
そんな風に言っていたけれど。
反動が来るには、まだ早い気がした。
あの人たちに出会わなければ、
たとえ、一生だって抑えていられたはず。

私はかじかむ手を摩りながら店内に入る。
暖かい。
暖かさで溶けだしたのか、
頭の回転が緩やかになりたす。
スイッチが切れていくのが分かる。
よかった。
あまり、自分のことは考えたくない。

店内を見渡すと、
さっき猫背だったお客さんが、
姿勢を伸ばして歩いてた。
やっと暖まったのかな、と思った。

窓の外はますます吹雪いていた。
写真には、写らなかった。

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