one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

無敵ギター

期待はずれだと思われること、

とても怖い。

指先から冷たい氷水に浸されていくみたいだ。


今日は朝から雨が降っていた。

薄らと湿度に憂鬱を含んだような空気。

視界はほんのりとぼやけているよう。


練習を切り上げた後、

スタジオから出て、ギターのお兄さんと、

金髪のお兄さんとコンビニへ行く。

朝からの雨なのに傘を持つ習慣がないせいで、

傘を持っていない私たちに、

お兄さんは傘を貸してくれた。

車に二本の傘が積んであるのを見て、

あぁ、彼女さんの分なのかなぁと思う。

私たちに貸してくれたものと、

お兄さんが差している方、

どちらがそうなのか、少しだけ気になった。


近くのコンビニまでの道を、四人で歩く、

大きな水たまり、みんなぴょんぴょんと飛び越える。

お店につくと、黒と赤の髪のお兄さんと、

金髪のお兄さんと、黒服の女の子二人という四人組は、

どうやらひどく目立つようで、

店員さんや、他のお客さんからの視線が気になる。

でも、どうやら私以外のみんなは、

そんなの気にしていないみたいで、

わいわいと、カラフルな商品棚をのぞき込んでいる。

みんなに倣って、私も気にしないことにした。

お兄さんたちの髪の色は綺麗だし、

ステージ上でライトに照らされれば、

見とれてしまう。

黒い服も、たまには着るだろう。

そんなものだ。

お兄さんはレジにうどんを持って並んでいた。

二日酔いだと言っていたので、

体に優しそうなものを食べるみたいだった。

私と友だちは、特に何か、

目当てがあったわけでもないので、

そのままふらりと外へ出た。


お兄さんたちと別れて、

深夜のファーストフード店。

スタジオからの帰り、

友だちとポテト食べながら話していた。

「私、全然駄目かなぁ」って言う。

「○○はいつも自分を卑下しすぎるよ。

ギターのお兄さんも、○○の好きな人も、

きっとすごくなるって、そう言っていた」

まっすぐに私の目を見て、友だちはそう言った。

友だちの目はとても大きくて、

比喩じゃなく、吸い込まれそうになる。

「うーん。それは嬉しいけど…」

濁した後半を、彼女の目は見ているのだろうか。

期待はずれだと思われることが、

私は心底怖い。

だから、出来ることならもっと練習しなければ。

期待してくれている人が、

みんな素敵な人たちだから、

その人たちの言うことは、みんな本当にしたい。

怖いけど、怖いから頑張るよ。

ワインレッドのお星様レスポール

少し重たいの頑張って、褒められるくらい、

成長したい。

友だちと一緒にえらんで、

好きな人が、探してセットアップしてくれて、

お兄さんがストラップピン調節してくれたギターだから。

これさえあれば、私は無敵だと思う。

そろそろ弦張替えの時期。


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