one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

待合室

昨日の事、思い出すだけで食欲がなくなる。

汚いのは、いったいどれだけのもの。
ぐったりしていたい、
身体はずぶずぶと溶けて、床の上に広がっていくようで、
そして、少しずつ床に染みていき、1階へ落ちていく。
ぽたり、ぽたりと滴る私自身を想像する。
起きてから私は、
しばらくそうやって、床の上にいた。

そうしてやっと、バイトの服に着替えて、
出かける準備をする。
今日はスタジオなので、
ギターとか、忘れないように気をつけなくては。

バイト先で友だちと会う、
でも、すれ違いシフトなのですぐにバイバイする。
先にスタジオに行っているみたいだった。
レジに立っていると、
Winstonを買っていく作業着のお兄さんから、
香水の匂いがする。
知らないけどとてもいい香りで、素敵だなぁと思う。
しばらく残り香が漂っていて心地よかった。

そのうちバイトも終わって、
着替えてからスタジオに行った。
スタジオにつくと、
金髪のボーカルのお兄さんと、
十五歳のドラマー君がいました。
ドラマーさんは、今日ライブのようで、
ばっちり化粧しています。
ギターのお兄さんの化粧を真似ているようで、
確かにそっくりだと思いました。

お兄さんの方を向くと、
今日はBスタだと聞いたので、中へ入ります。
そして、先に来ていた友だちと話していました。
すると、突然に、
私の好きな人がふらりとスタジオに現れました。
顔を見た瞬間、昨日のこととか、色んなこと、
思い出して泣きたくなります。
でも、我慢して、笑います。
好きな人は今日も優しそうでした。
相変わらずくまのプーさんみたいです。
(決して、本当に優しいわけではないのですが)
ふらりとやってきた人は、ふらりと立ち去っていきました。
どうやら今日は、ライブを見に来ていたようです。
ライブの音は、スタジオまで響いてきます。

練習を二時間で終えると、
待合室みたいなところで、
十五歳のドラマー君と、お兄さんと私たちで、
色々話しました。
ドラマー君は、ギターも弾けて、凄い人でした。

しばらくして、何気なくついていた待合室のTVに、
 X JAPANが映りました。
人があちこちから集まってきます。
お兄さんとドラマー君は、
家で録画もしていると言っていましたが、
身を乗り出していました。
私たちも、集まってきた人たちと一緒にTVを見ました。
色んな人が、色んな感想を口々に述べていて、
なんだかとても楽しかったです。

TVも終わって、人が少なくなりかけた頃、
ライブ終りの人たちがやってきます。
ドラマー君はお兄さんと話すのに夢中で、
メンバーの人が来るまで、ずっと楽しそうに、
いろんな話を続けていました。
ライブ終りの人たちが少なくなった頃、
今度はスタジオにいたらしい、
二人組のお姉さんとも話しました。

今日は色んな人と一気に会って話したので、
少しくたびれてしまいました。
でも、それと同じくらい、嬉しかったです。
練習も褒められて、嬉しいので、来週も頑張ります。

煙草の煙と、音楽が染み付いた待合室に来る人たちは、
素敵な人ばかりなので、
家に帰るのが億劫になります。
日付が変わったころ、
後ろ髪を引かれながら帰りました。