one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

カイロスの時間

静かな夜に、
深い青に溺れてしまいながら、
それでも、友だちからのメッセージに、
ひとつひとつ返信する。
自分でめちゃくちゃに散らかした部屋の隅で、
あーあ、片付け大変って思いながら蹲ってる。
反対の隅に転がってる、ガラス板粉々の時計は、
あんなになっても、まだ、
細切れに時間を刻む音を立てていて。
今、私の中に流れる、チクとタクの間と、
友だちや、その他の人たちが流されてる一秒は、
どんなに頑張っても繕えない誤差があるんだと思った。
自分という意識は、
時間の中にじわりと溶けだして、
そこに主張し続けている。
世界で、一定を保って流れ続ける時間なんて、
ないのかもしれないと思った。

目を凝らしてみると、時計は四時半を指している。
あと、二時間で大きな音を立てる予定のそれから、
電池を取り出して、ゴミ箱に放り込んだ。
私は何故か少しだけ、時計が怖くなった。

新聞配達の人のバイクの音と、
お昼と夕方の町内放送、
隣の家の人の車の音とか、
そんなもので時間を感じていたい。
時計を外して、耳をすませて生活すれば、
不便だけど、少しだけ軽やかかもしれない。