one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

靴箱の記憶

起きてみたら昼過ぎだった。

びっくりしながら誰もいない家でギターを弾いた。
いつもより少しだけ大きな音を立てた。
しばらくして、お腹がすいたので、
冷凍食品を適当に皿にのせて電子レンジに入れた。
取り出すと、温まり方がバラバラだった。
仕方ないので気にせず食べた。
冷たいところの方が美味しかったりして、
お腹壊さないか少しだけ心配する。

夕方頃、仕事終わりの友だちと合流して、
卒業した高校へ行った。
友だちは、昨日買ったワンピースと、
とてもかっこいい革ジャンを着てた。
パーカーとか着て来たのを少し後悔した。
でもパーカー好きだし仕方ないや。

途中でスーパーに寄ると、差し入れにゼリーを買う。
みかんと、ミックスフルーツとももをたくさん買った。

到着した高校は、建物自体は全然変わってないのに、
知ってる先生はほとんどいなくなってて、
不思議な感じがする。
入れ物は一緒なのに、中身が全然違うからかもしれない。

部室に行くと、後輩さんたちは真面目に活動していた。
私たちの代は活動時間のほとんどを、
トランプやダーツ、お喋りで消費していたので、
うわぁ。後輩さんたちはすごいなぁって思った。

顧問の先生は、私たちの顔を見ると、
少し嫌そうにして、目をそらした。
大会前の集まりをLIVEで欠席したりとか、
その他にも色々なことを思い出して、
先生は未だに怒ってることを実感する。
あの欠席の連絡をした日の先生は、
怒りで震えてて、顔も真っ赤になってて、
お説教の言葉すら呂律が回っていなくて、本当に面白かった。
卒業してからも何度もそのこと思い出して、
友だちと笑ったりしている。
全然反省してない。

部室内の小さな部屋で、先に来ていた二人と合流する。
それから、生徒相談室で、知り合いの先生と話した。
職員室の先生に会ったとき、
「あなたは、頭だけはいいと思うんだけど」
って言われたの悲しかったので、
ここでは少し言葉少なにした。
先生の今の夢は、
森山直太朗のマネージャーだって言ってた。
ジュースも買ってもらった。
友だちのメロンジュースが爆発して、
部屋中が甘い匂いになる。
相談室の椅子は体が沈むほどふわふわで好き。
きっと校長室の椅子なんかより座り心地がいいと思う。
適当に色んな話をしてたけれど、
先生が、デート行かなきゃだって言ってたので、
私たちも帰ることにした。
四人で真っ暗な廊下歩いていると、
部活の帰り道を思い出す。
靴箱に行けば、まだ自然と自分の靴が入っていそうな、
そんな錯覚をおこしてしまう。

校舎を出ると、
なんとなくみんなで焼肉屋さんへ行くことになった。
そういえば、卒業旅行の夜ご飯も焼肉だった。

焼肉屋さんに着いて、
みんなでたくさん食べて、話した。
四人のうち一人は、アルコール摂ってないのに、
完全に酔っ払ってるみたいなテンションになっていて、
なんだかとても面白い。
私はお肉をあみの上に載せるだけで忘れてしまうので、
頻繁に真っ黒の固まりを作ったりしていた。
みかねた友だちが私のぶんもひっくり返してくれるので、
たまに普通のお肉も食べれました。
楽しくて、本当に時間を忘れる。
定員さんが、閉店ですと言いに来るまで、
何も気づかなかったことにみんなで驚く。
いつかまた遊ぼうって約束して帰る。

帰り道、友だちがバンドの話をする。
「早く、ドラムとか探さなきゃ」
「そうだねー」私は答える。
本当は自分と友だち以外の人が入るのが怖い。
でも、それはどうしようもないことなので、
なんとかしようと思う。
「頑張るぞー」ってひとり言を言った。