one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

CDに詰め込まれた

眠たくないのと、

ギターの練習しなきゃいので、

二重の意味で眠れない夜に、

ギターのお兄さんからもらったCDのこと、

思い出した。


コンビニお菓子と一緒に入れてたから、

お菓子も食べながら聞こうと思った。


オムニバス形式になっていて、

お兄さんのバンドの曲、

何曲目なんだろうって思いながらラジカセに入れた。

CDの表見たら書いてあったかなって、

ラジカセに吸い込まれていくの、

ぼんやり眺めながら思った。

曲、聞いたら分かるのかな、

分からなかったら見ればいいんだろうけど、

それじゃ悲しいなって思った。


全部で十七曲、

お兄さん曰く「しゃーしい」曲が多かった気がする。

でも、私はあんまり好き嫌いないので全部聞く。

お兄さんのバンドの曲は四曲目だった。

案外あっさり分かって拍子抜けしてしまう。

ベッドの上に倒れ込みながら、

お菓子食べるのも忘れて聞いた。

途中で雨がすごい勢いで降ってきたみたいだけど、

ギターだけ濡れないように引き寄せて、放っておいた。


六曲目の女の人の声がとても綺麗で、

いきなりデスボイスに変わったりして、

余計に綺麗に感じられた。

私はギターを持った手を見た。

ギター弾くために、

右手の親指と中指、薬指と小指、

それ以外短くなった爪。

薄い水色に塗ったのに、右手の人差し指だけ、

弦に擦れてボロボロだった。

もう、人差し指は、

塗り直すの諦めようかなって思った。

雨はやっぱりまだ降っているけど、

雨脚は少し弱くなってきたみたいだ。


「練習しなきゃ」

呟きながら、教本についたコード表を眺める。

早く、ライブハウスに立って、

好きな人に見てもらえるくらい、

思いっきり背伸びして、ギターを弾きたい。

きっと隣で友だちがベース弾いててくれるから、

そこがどんなに怖い場所でもきっと大丈夫。

早く、早く、早く、早く、

先走る気持ちを押さえ込みながらCDを聞く。

これを聞き終わったら、

練習頑張れそうな、そんな気がした。


赤色のレスポールギターは、

キラキラ光を反射してる。

十八年使われたギターを見た時、

使い込まれたそれは、

表面のキラキラがなくなっていたのを思い出した。

でもきっと、きらきらは擦り切れたんじゃなくて、

ギターの中に吸収されたんだ、多分。

私のギターにも、たくさんのきらきらを、

あふれるくらいに詰め込みたいと思った。

でもきっと、まだまだ遠い話。

溜息をつきながら、CDをリピート再生にする。

もうしばらく、聞いていたいと思った。