one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

ラーメンの話

スタジオ、練習終わり。

一時間近く立ち話。

その間に、お兄さんは、丁寧にギターを磨いて、ハードケースにしまった。

スタジオ番のお兄さんとも、少し話した。

いつも気さくで、本当に優しい。

それからしばらく、お兄さんと二人で、これからのことを話していた。

そして、ご飯。

人とご飯を食べる貴重な時間。

週に一回、あるか、ないか。

何を食べようかと話す。

焼肉、ハンバーグ、重たい。

お寿司にしては、時間が遅くなってしまっていた。

やっぱり、今日もラーメン。

始めていくところ、前回は閉まっていた、駅前のお店へ行ってみた。

高校生の頃、よく歩いていた場所なのに、お店の存在を知らなかった。

表通りにある、チェーン店には、少し記憶があったけれど。

少し歩くけれど、二人で歩いていった。

お店に入ると、すごく人が多く、二人で並んで座れるか不安なくらいだった。

そして、むせ返るような豚骨の出汁のようなにおい。

食べた結果は、今まであちこちラーメンに行った中で、まぁ、酷かった。

しかも、厨房が目の前なので、

味の感想がお互い伝えずらい。

途中で、お兄さんが、大分ぼかして伝えてきたのに、必死に頷く。

帰り道、美味しいラーメン屋さんの話をしながら帰る。


今度はまた美味しいとこに行こうと約束して帰った。


家に帰って、林檎を一つ切り分けて食べました。

寝言

花曇りが過ぎて、ついに雨になった。

薄く水を張った道路に、花びらが浮かぶ。


私は街灯を頼りに、ふらふらと歩いていた。


コンビニで買うソフトクリームだけで生活していた。

お兄さんが好きだと言っていたからかもしれない。

それだけは喉を通った。


道端に、チョークの落書きを見つけた。

消えかけの、名前がふたつ。


石、光、車、家、犬。

私の辛さは染み付いた。


どこへも行けない。

GREEN DAYで起きる朝だけが優しかった。

私の魚はボロボロになった尾ひれを必死にばたつかせる。

沈む、街の中に沈む魚たち。

ここで叫び声をあげる。


おばあちゃんの事を思い出して、

思わず仏壇の前で毛布にくるまって寝たくなる。

心細さに、私は心底飽き飽きしている。


優しい人の声ばかり再生ボタンを押す。

いつも、怖い犬が寝ている。

みんな夜は寝る。

自分にとっての夜に寝る。

もう目覚めたくないなんて陳腐な言葉で誤魔化されない感情。

産み落とされるのは、橋の上。

突き落とされてしまうようなことは無い。

マイスリーの包装紙。

弱りきった私たち。

明日が来るのなら、来るのだから。

白の靄

一目みれば、泣いてしまうような桜だった。

手に持っていたパンも、隣にいる友人も、

全てが一瞬で桜に奪われ、遠くに連れていかれる。

ポケット中の携帯には、先輩からのメッセージが届いていた。

あの景色の中で、私はどれだけのものを掴み、それ以外を取りこぼしたのかわからない。

ピアスは7個に増えて、いよいよといった感じだった。

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後ろ向きに側転をする

何も悪いことは無かった。

朝からギターを弾き、練習へ行き、その後ラーメンをご馳走になり、お喋りをして帰ってきた。

なのに、なぜか眠たくて、頭が痛くて、お腹が痛くて、生きていることが許されている感じがしない。

早く眠ってしまえば良いのに、それすら出来ずに、頭の中の気持ち悪いところをさまよっている。

カートコバーンはギターが下手。

なんとなくその言葉が少しだけ明るい。

きっと2、3日はバイト以外は死んだように過ごすしかないんだと諦めている。

自分に対する慣れ。

課題のギターソロは、ミステイクばかり再生してしまったりして。

めちゃくちゃなメモ、から、音へ。

マルティーニ

My Bloody Valentineのsometimesを聞きながら湯船に少しずつ沈んでいくと、まるで死んでしまうような気がした。

なんとなく、透明になりたくて、ご飯の量が、ほとんど無くなっていた生活。

水曜日の練習のあと、お兄さんとラーメンを食べた。その後、私はチョコチップクッキー、お兄さんはさきいか、選んで発泡酒とマルティーニを1本カゴに入れて、深夜のドンキホーテのレジに並ぶ。無愛想な店員さん。

お兄さんの家で、乾杯する。

深夜のよく分からないテレビが小さな音で流れていて、お兄さんのiPadで、YouTubeが開かれていた。

私は、お兄さんから色んな曲を教えてもらった。

その中でも、sum41がとても好きになり、スマホのメモに書き記しておいた。

眠気に負けて、その日は朝の9時ごろ眠ることにした。

帰りは、半分くらい車で送ってもらった。

お煎餅のお土産まで頂いた。

前日、クッキーのお土産を貰っていたのと、別の方からも、ビスコ頂いていたので、お菓子がたくさんでした。

電車に乗ると、悲しくなる。

後日、また何か、うまいもの食べに行こうとLINEが来ていた。楽しみです。


実の父親と、こんなふうに話せたなら、どんなに幸せなんだろうと、お兄さんといる時によく思う。

叶わないことを、想像することは辞めるように心がける。

バイト先には、私の母を自称する人が二人もいる。

誰も、私の幸せを願うと言ってくれる。

手首は切らないけど、その代わりに、

今回はピアスを四つ増やすことにした。

限界までピアス増やしたいですねと、バンドの先輩と話した。

ニードルはうまく使えなくて、ピアッサーで開けているけど、問題が起きることなく、ホールが無事完成していく。

一瞬の痛みに耐えること、それにより付いた傷の可視化。

増やすピアス増えるピアス。


ベランダと洗濯機

季節は3月の初め、気温は2度前後だった。

コンビニから買ってきたビールと缶チューハイを持って、ベランダへ出た。

暖かい部屋にいた私たちの息は白く染まる。

そのうちタバコを吸いだしたので、息が白いのか、煙草の煙が白いのか分からなくなってしまった。

窓ガラスの向こうから、ガウンガオンと洗濯機の回る音がする。

私は、寒いのに何でこんなことをしているのだろうと思いながらチューハイを飲んだ。

見上げた空には、探せば見える程度の星があった。

私の飲み干したチューハイの缶に、吸い終えた煙草を入れる。

くだらないこと。

全ては、余興にすぎない。

寒い中、晩酌をベランダでやることはもうないかもしれない。

だから、今日くらいは、と思った。

新聞屋さんを眺めるまで、何でもないことを話していた。

カレー

日付が変わって暫く、私はただ蹲っていた。
二月が終わり、三月が始まっている。
高校の部活の人達と集まり、だらだらとご飯を食べた。
元々六人いた部活の面々だが、今日集まったのは四人だった。
私と、友人と、部長と、もう一人。


薄利多売を謳い文句にしている居酒屋へ行った。
部長は歌うようにスラスラとメニューを読み上げ、大量の料理を注文し、
私と友人はとりあえず烏龍茶を頼み、
もう一人は途中でボンカレーを食べていた。
思い出話は特にしなかった。
部長の、恋愛に疲れたという話をしばらく聞き。
こんなに恋愛について熱弁しているのだから、
半年経たずに新しい恋人を作るであろうと思った。

部長は東京へ行くという。
この春保育科を卒業し、保育士になるという事だった。

友人と二人で、帰り道に何となく、全然関係の無い話をしていた。
それだけが救いのような気がしたし、
私は救われていたかったのだと思う。