one room

忘れたくないことと、忘れてしまったことについて

後ろ向きに側転をする

何も悪いことは無かった。

朝からギターを弾き、練習へ行き、その後ラーメンをご馳走になり、お喋りをして帰ってきた。

なのに、なぜか眠たくて、頭が痛くて、お腹が痛くて、生きていることが許されている感じがしない。

早く眠ってしまえば良いのに、それすら出来ずに、頭の中の気持ち悪いところをさまよっている。

カートコバーンはギターが下手。

なんとなくその言葉が少しだけ明るい。

きっと2、3日はバイト以外は死んだように過ごすしかないんだと諦めている。

自分に対する慣れ。

課題のギターソロは、ミステイクばかり再生してしまったりして。

めちゃくちゃなメモ、から、音へ。

マルティーニ

My Bloody Valentineのsometimesを聞きながら湯船に少しずつ沈んでいくと、まるで死んでしまうような気がした。

なんとなく、透明になりたくて、ご飯の量が、ほとんど無くなっていた生活。

水曜日の練習のあと、お兄さんとラーメンを食べた。その後、私はチョコチップクッキー、お兄さんはさきいか、選んで発泡酒とマルティーニを1本カゴに入れて、深夜のドンキホーテのレジに並ぶ。無愛想な店員さん。

お兄さんの家で、乾杯する。

深夜のよく分からないテレビが小さな音で流れていて、お兄さんのiPadで、YouTubeが開かれていた。

私は、お兄さんから色んな曲を教えてもらった。

その中でも、sum41がとても好きになり、スマホのメモに書き記しておいた。

眠気に負けて、その日は朝の9時ごろ眠ることにした。

帰りは、半分くらい車で送ってもらった。

お煎餅のお土産まで頂いた。

前日、クッキーのお土産を貰っていたのと、別の方からも、ビスコ頂いていたので、お菓子がたくさんでした。

電車に乗ると、悲しくなる。

後日、また何か、うまいもの食べに行こうとLINEが来ていた。楽しみです。


実の父親と、こんなふうに話せたなら、どんなに幸せなんだろうと、お兄さんといる時によく思う。

叶わないことを、想像することは辞めるように心がける。

バイト先には、私の母を自称する人が二人もいる。

誰も、私の幸せを願うと言ってくれる。

手首は切らないけど、その代わりに、

今回はピアスを四つ増やすことにした。

限界までピアス増やしたいですねと、バンドの先輩と話した。

ニードルはうまく使えなくて、ピアッサーで開けているけど、問題が起きることなく、ホールが無事完成していく。

一瞬の痛みに耐えること、それにより付いた傷の可視化。

増やすピアス増えるピアス。


ベランダと洗濯機

季節は3月の初め、気温は2度前後だった。

コンビニから買ってきたビールと缶チューハイを持って、ベランダへ出た。

暖かい部屋にいた私たちの息は白く染まる。

そのうちタバコを吸いだしたので、息が白いのか、煙草の煙が白いのか分からなくなってしまった。

窓ガラスの向こうから、ガウンガオンと洗濯機の回る音がする。

私は、寒いのに何でこんなことをしているのだろうと思いながらチューハイを飲んだ。

見上げた空には、探せば見える程度の星があった。

私の飲み干したチューハイの缶に、吸い終えた煙草を入れる。

くだらないこと。

全ては、余興にすぎない。

寒い中、晩酌をベランダでやることはもうないかもしれない。

だから、今日くらいは、と思った。

新聞屋さんを眺めるまで、何でもないことを話していた。

カレー

日付が変わって暫く、私はただ蹲っていた。
二月が終わり、三月が始まっている。
高校の部活の人達と集まり、だらだらとご飯を食べた。
元々六人いた部活の面々だが、今日集まったのは四人だった。
私と、友人と、部長と、もう一人。


薄利多売を謳い文句にしている居酒屋へ行った。
部長は歌うようにスラスラとメニューを読み上げ、大量の料理を注文し、
私と友人はとりあえず烏龍茶を頼み、
もう一人は途中でボンカレーを食べていた。
思い出話は特にしなかった。
部長の、恋愛に疲れたという話をしばらく聞き。
こんなに恋愛について熱弁しているのだから、
半年経たずに新しい恋人を作るであろうと思った。

部長は東京へ行くという。
この春保育科を卒業し、保育士になるという事だった。

友人と二人で、帰り道に何となく、全然関係の無い話をしていた。
それだけが救いのような気がしたし、
私は救われていたかったのだと思う。

ゼリー

朝から、得体の知れないもに責められ続けるイメージが拭えない。
起き上がらなければ、そう思えど身体を動かせない。
そのうち、怠け者、そんなふうに言うその声は大きくなっていく気がした。

それでも、バイトには行った。
行くと、友だちがキティちゃんのゼリーをくれた。
可愛くて、嬉しくなった。
これも、と、黒糖のポンデリングもくれた。
私の好きなもの。
シフト終えて、携帯を見ると、
バンドの先輩からメッセージが来ていた。

私は多分、色んな人に生かされていた。

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前夜

I'll never be able to give up on you
So never say good bye and kiss me once again

あたしは絶対あなたの前じゃ
さめざめ泣いたりしないでしょ
これはつまり常に自分が
アナーキーなあなたに似合う為
現代のシド・ヴィシャス
手錠かけられるのは只あたしだけ

行かないでね
何処にだってあたしと一緒じゃなきゃ厭よ
あなたしか見て無いのよ
今すぐに此処でキスして

違う制服の女子高生を
眼で追っているの 知ってるのよ
斜め後ろ頭ら辺に痛い程視線感じないかしら
そりゃ あたしは綺麗とか美人な
タイプではないけれどこっち向いて

行かないでね
どんな時もあたしの思想を見抜いてよ
あなたの長い睫毛も其の華奢で大きな手も
全部大好きなの
何処にだってあなた程のひとなんて居ないよ
あなたしか見て無いのよ
今すぐに此処でキスして

行かないでね
何処にだってあたしと一緒じゃなきゃ厭よ
あなたしか見て無いのよ
今すぐに此処でキスして ねぇ

I feel so nice 'cause you are with me now
It is certain Ilove you so much baby
I'll never be able to give up on you
So never say good bye and kiss me once again
woo… ai ai ai…


さめざめ泣きながら歌う。
明日来ていくドレスに、香水を撒きながら歌う。
ヘアセットの予約は6時。
もう寝なければならないのに、
私はいつまでもこの曲を歌っていたかった。